2005年8月のエッセイ「青高野」 豊長 みのる千年の杉のこゑ棲む青高野 みのる 弘法大師空海入定の地高野山は、その日邃い緑に包まれていた。千年の巨杉は亭々と聳え立ち、折から厚雲を割って指しはじめた日矢は、青杉の木立を洩れてけぶるように聖地高野の荘厳を現出せしめていた。 金剛三昧院の六本立ちの天狗杉を仰いで、やおら奥の院への鬱蒼たる杉の参道を深入るころには、自ずと身もこころも清浄の気に打たれるのであった。 山気いよいよ澄み、夏というのに冷えびえとした霊域は、千百七十余年の昔、大師が開創の斧を振るわれた谺が、今はっきりと私の胸に蘇ってくるようであった。 <千年の杉のこゑ棲む>、と詠嘆してこの一句は成った。その時、高野は深沈と鎮まりかえり、私の魂までも青く染めていった。 (みのる) ちなみに、この句碑は平成五年十月二十九日除幕。別格本山高野山金剛三昧院に建立された。 金剛三昧院(長老 久利康彰僧正) 句碑石材 大江山御影石(京都府福知山市字天座(あまざ)産) 高さ 167センチ 巾 122センチ 奥行 45センチ 重量 2.5屯 人呼んで青高野句碑として、高野山の代表句碑九基の中の一基として指定されている。 ◆青高野句碑除幕式 祝辞 高野山眞言宗管長 總本山金剛峰寺座主 大僧正 竹内崇峰 高野山の名刹であります別格大本山金剛三昧院の境内に、豊長みのる先生の句碑が建立され、本日落成の慶事が厳粛裡に執行されましたことは、誠にお芽出度く、ご同慶の至りに存じます。 御承知の如く、お大師さまによって開かれた高野山は、世界に誇り得る聖地であり、人々の心の故郷であり、古より多くの文人に愛されたお山でもあります。 忝くも、歴代の天皇さまをはじめ、高名な歌人や俳人も、高野山に因んだ多くの佳什を遺されています。 思うに、山河自然を愛する心こそ、文学に親しむ基であり、祈りの世界に生きることでもあります。 国宝の多宝塔、天然記念物の大石楠花でも名高い当院に、豊長みのる先生の句碑が完成しましたことは、先生と風樹の皆さまばかりではなく、高野山を愛する者の悦びであり、延いては高野山の俳句文学を後世に永く顕彰するものと確信致します。 本日は本当にお芽出度うございました。 以上 (本文及び俳句の表現で、ふりがな表示が括弧書きになっているのは、インターネット・システムの制約のためです。ご了解ください・・・事務局) |