関西現代俳句協会

会員の著作(2024年事務局受贈分)

  句集

『雨の日』

宇多喜代子

KADOKAWA 2024年7月10日発行



当たり前に詠む

ひとつぶの雨は
ひとすじに結ばれて、やがて
おおきな水のかたまりとなる。
「山はおおきな水のかたまり」
祖母から教えられた言葉は、
自然観と生活信条の礎となった。
雨や風や太陽や水、なにより
清新な森の匂い――。
身辺のものは、みな愛おしく、
当たり前のことを
当たり前に詠めるようになった。
俳句には退屈がない。

栞文より

 

 句集『森へ』から五年が過ぎましたが、不覚にもその間に体調を崩してしまい、存分な心身で句作に向かうことがむつかしくなりました。それでも好きな俳句があることで日々を楽しく、滅入ることもなく過ごせたことは、まことに有難く嬉しいことです。
 体調不完全な詩心からの句を恥ずかしく思いつつも、好きな森の匂いに後押しされてまとめた句集です。

宇多喜代子・・・・・「あとがき」より


○帯「自選十五句」より

  山桜山のさくらと咲き並ぶ

  桜どき足もとにまでものの影

  ありなしの雨にも音や今日穀雨

  札幌の道まつすぐに青嵐

  老人の語る老後にも真夏

  古来とはいつよりのこと鏡餅

  終日の雨よ西東三鬼の忌

  厭戦のかたちの葎雨しとしと

  透明な一品をもて夏の膳

  心身を方形にして茅舎の忌

  笛を吹く役に徹して里神楽

  歳神の機嫌の沙汰や雨催

  秋草に長き名のあり風の中

  夏の雨折々混じるひとの声

  一身を大事とおもう雪の朝


○発行

 株式会社 KADOKAWA
 〒102-8177 東京都千代田区富士見2-13-3
 電話 0570-002-301(ナビダイヤル)

 (定価 2,700円+税)

◆句集『雨の日』: 宇多喜代子(うだ・きよこ)◆

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